全国各地で、腐食が進んだ消火器を操作したことによる人身事故が発生しております。
事故事例をみると、底部が腐食した加圧式消火器によるものが多く、使用時に底部が抜け消火器が顔面などに当たり負傷・死亡するケースが大半です。
こういった消火器の破裂事故は極めて稀ですが、何年かに一度の頻度で繰り返し発生しています。また、発生したときには大きな事故となることが多いだけに注意が必要です。
未然に事故を防止するため、下記のことについて注意するようお願いいたします。
消火器の点検
- 消火器本体に錆、塗色の剥離、損傷がないか点検する。
- ホースの結合部が緩んでいないか、ホース自体に傷などがないか点検する。
- 蓄圧式消火器は、圧力指示計の指針が規定値内(緑色の部分)にあるか確認する。
- 消火器が濡れたり、汚れたりした場合は、すぐにふき取る。
消火器の管理
- 消火器が風雨にさらされる場所や湿潤な場所等に設置しない。
- 消火器の状態を点検し、腐食が進んでいるものは、絶対に使用しない。
消火器の廃棄
- 消火器は、「処分上の管理又は処分作業に支障を起こすもの」として指定され、一般廃棄物として回収できません。
- 古い消火器、不要になった消火器については、放射、解体等の廃棄処理を自ら行うことなく、回収を行っている事業者に廃棄処理を依頼して下さい。(その際、中身を残したまま引き取ってもらう)
特に、腐食が進んでいる加圧式の消火器は、容器破裂の危険性が大きいので、速やかに廃棄処理を依頼するようにしましょう。
なぜ消火器が破裂するのでしょう?
『ABC粉末 加圧式』と呼ばれる消火器は、内部に小さなボンベが入っていて、炭酸ガスなどが圧縮された状態で充填されています。(左上写真参照:銀色の丸みを帯びた容器がボンベ部)。消火薬剤を放射する仕組みは、安全ピンを抜き、(1)のレバーを握るとカッターが(2)のボンベの封板を破り、消火器の内部の圧力を急激に高めて(3)のホースより消火剤を勢い良く放射するようになっています。(右図参照)
この圧力は、最大時には約15キログラムフォース/平方センチメートルにもなります。(薬剤量、メーカーにより差があります)。
消火器の破裂事故は、この圧力に老朽化した容器が耐えられなかった結果、起こるものです。(左下写真参照)
過去10年における老朽化消火器の破裂による人身事故の状況
事故発生 | 場所 | 人的被害 | 機種型式 | 製造年 | 経過年数 | 事故概要 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年 | 月 | 事故発生の状況 | 破損箇所 | ||||||
11 | 12 | 東京都 北区 |
負傷者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 10型 |
1987 | 12 | 解体作業中 | 容器本体底部 |
13 | 3 | 愛知県 名古屋市 |
死者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 20型 |
1979 | 22 | 廃棄のための放射操作 | 容器本体底部 |
13 | 4 | 北海道 帯広市 |
死者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 20型 |
1977 | 24 | 野焼きの火を消火しようとして操作 | 容器本体底部 |
13 | 11 | 福島県 いわき市 |
負傷者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 10型 |
1975 | 26 | 子どもが遊んでいたところ破裂 | 底部が破損 |
16 | 7 | 千葉県 八千代市 |
負傷者 | 1名 | 粉末 加圧式 10型 |
- | - | 消火器を分解中、口金が割れてガスが噴出し、飛び出したもの | 口金が破損 |
18 | 4 | 佐賀県 佐賀市 |
負傷者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 10型 |
- | - | 個人住宅に設置していた消火器を移動した際、底部の腐食部分が破裂 | 容器本体底部 |
18 | 9 | 京都府 京都市 |
負傷者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 10型 |
1989 | 17 | 下水へ流すため、安全栓を抜き、レバーを握ったところ破裂 | 容器本体底部 |
20 | 4 | 北海道 函館市 |
負傷者 | 1名 | 粉末 加圧式 |
1981 | 27 | 廃棄するため、レバーを握ったところ破裂 | 容器本体底部 |
21 | 9 | 大阪府 大阪市 |
負傷者 | 1名 | ABC 粉末 加圧式 20型 |
1989 | 20 | 子供が遊んでいたところ、屋外駐車場に置かれていた消火器が破裂 | 容器本体底部 |
21 | 9 | 福岡県 行橋市 |
負傷者 | 1名 | - | - | - | 納屋の軒下に置かれていた消火器を自ら廃棄しようと、操作しようとしたところ破裂 | 容器本体底部 |