長谷 耕平さん、真澄さん、李咲くん、掌くん
そして子どもたちと一緒に、一つひとつ成長していくこと。
池田という土地の豊かさを存分に吸収しながら毎日を過ごす、長谷さん一家を訪ねた。
群馬県で、ログハウスの大工として修行を積んでいた耕平さん。
5年ほど経ち、一人で建てられる技術を習得した頃、東京で開催された北海道移住フェアで、町の移住協議会メンバーでもある赤坂正さん(赤坂建設㈱代表)と出会ったことが、縁のはじまり。
地域おこし協力隊として、エゾシカの駆除に関わる仕事を募集していると聞いた耕平さんは、一つの夢を思い出した。
10代の頃、星野道夫の「ノーザンライツ」を読み、自然とともに生きるネイティブインディアンの姿に憧れた。
狩猟に関心を持ったのもこの頃から。
長年の夢にチャレンジする機会が巡ってきたのだ。
念願が叶い移住してきたのは2016年。
エゾシカの狩猟を始めると、気になったのは廃棄される鹿革のこと。
鹿肉はまだ需要があれども、鹿革の再利用はなかなか進んでいなかった。
そこで自ら鹿革の加工を始め、2017年にオンラインショップ「EZO LEATHE RWORKS」を立ち上げた。
全国の職人と力を合わせ、池田町のエゾシカ革を使った商品を生み出している。
猟師、革職人、そして大工。
ログハウスの建築の仕事は、遠方からも声がかかるようになり、どんどん仕事のフィールドは広がっている。
「どの仕事も実は山を起点に複合的につながっているんです。」常に山とともにある耕平さんの生き方は、幼い頃に憧れた星野道夫の生き方に重なってきているように感じた。
知り合いもいない見知らぬ土地での生活。
妻の真澄さんにとって欠かせない存在となったのが、同じフラダンス教室に参加しているおばあちゃんたちだ。
子育てへの助言をはじめ、北海道の味付けや漬物の漬け方など、北海道での暮らしを一つひとつ教えてもらった。
住めば住むほど深まる人との縁。
池田町での暮らしは居心地が良くなる一方だと真澄さんは笑う。
「もともと料理を仕事にしていたのでカフェとかもやりたいんですけど、今は子育てにハマっています。」小学1年の李咲くんと3歳の掌くんとともに、自家菜園で野菜を育てたり、近くの森や川へ遊びにいったり。
子どもたちと体験するあらゆることが真澄さんにとっては新鮮でワクワクするのだという。
子育ても思いっきり満喫しているようだ。
池田町に移住し6年。
地域の人たちと築いてきた人の輪は、もっと深く、さらに広がっていこうとしている。
「いろんな時間が本当に豊かなんです。
町の人にどんどん恩返しをしていきたい」という真澄さんの一言が胸に響いた。
D型倉庫内の内装も全て耕平さんがデザインしている。
PROFILE
2016年に群馬県嬬恋村から移住。耕平さんは東京都出身。妻の真澄さんは兵庫県出身。D型倉庫を改造した自宅を前に写真撮影。倉庫内には工房や展示スペースのほか、住居スペースであるトレーラーハウスが。すべて耕平さんのお手製である。